
遺品 回収の系統
午後2時からの法話だったので、十分前にうかがったのだが、もうお経が始まっていた。
檀家さんがほとんどなのか、みなよくお経を知っている。
私も声は出さず、だけパクパク合わせひとしきり終わったところで、法話をされるお坊さんが入っていらした。
お若いが、声もよく好感の持てるお坊さんだった。
他所のお寺さんから法話のために招かれていらしたようだ。
年齢は41歳で学校の教員をされていたが、最近お寺を継がれたと自己紹介された。
「人生の先輩方に若輩の私がお話しすることもないのですが……」という前置きの後、法話が始まった。
そりゃあ、そうだ。
お集まりの方はみな、71?81代。
新ご住職の倍も生きていらっしゃるわけだもの。
ところが、微慢でない謙虚で新鮮なこの新ご住職にみな、素直に耳を傾けたのである。
誠実な人柄が年代・立場を超えて人の心に入っていけるものなのだと感じた。
新ご住職は、「21年前といまを比べて、信頼が持てるようになったものは天気予報ぐらいなものだと聞きますが、信頼できない職業に坊主が入ってなくてよかったと思っています」と言われた。
私は内心「入っている、入っている」と心の中でつぶやいたが、少なくともこのお坊さんに関しては信用できそうである。
お若いからこその本音がボンボンと出てくる。
「親驚上人ですら、比叡山に参ったものの、迷いの世界から抜け出せなかったといいますから、我が迷っても当然なのですが、いま自分の命がどういう時代に置かれているのかというと、信用・信頼の信が抜けて己の欲に任せて生きている時代なのです。
家族の健康を祈る方だって、結局は家族が健康でいてもらわないと自分が困るからなのです」おじいちゃん、おばあちゃんは皆、目が点になっていた。
「生・老・病・死。
この下にはすべて苦が付きます。
いまは意識がなくなっても、医療機械によって生かされるのです」これには、おじいちゃん、おばあちゃん、みな一様にうなずいていた。
私たちがよくお葬式でいう「ご冥福(冥は暗闇)をお祈りします」は、「暗闇の世界に行ってもお幸せに」という意味だという。
結局、この法話の最後は、「いつも心に阿弥陀様がいらっしゃるわけではありませんが、とにかく祈りましょう!南無阿弥陀仏…」というお経で終わった。
一礼し立ち上がると、「こちらへ」と別室に案内された。
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